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はじめまして!
当「合鍵物語」は、合鍵にまつわるたくさんの特別な思い出を集めたサイトです。
両親共働きで鍵っ子だった思い出、彼から初めてもらった鍵、などなど!とっておきのエピソードがいっぱい。
合鍵は複製できても、思い出は複製できないのです。ぜひ一話ずつ大切に読んでいってくださいね。

僕の合鍵

僕が小学生に上がる時、母が働きに出ることになった。
父は朝から晩まで働くサラリーマン。
その時は気づかなかったけれど、きっと父の仕事があまりうまくいっていなかったのだと思う。
母がある日、「お母さん、働きに出ることにしたの」と言い、近所のスーパーのレジ打ちをすることになった。

僕といえば、「どうせ働くなら、もっと格好いいところに勤めてくれたら良いのに」と思った。
隣に住んでるミエちゃんの家も共働きだけど、お母さんはとっても格好いいスーツを着て颯爽と出て行く。
お父さんもパリッとしたスーツを着て、格好いい。
うちは、お父さんは二枚10000円で買ったヨレヨレのスーツが制服。
こんなだから、せめて母くらいは格好いい仕事をしてほしいと思ったのである。
だけど、きまった仕事はスーパーのレジ打ち。
しかも、うちの近所のスーパーだから、友達に「お前のかーちゃん●●ストアでレジ打ってたぜ」なんていわれるのは目に見えている。
こういう噂は流れるのがとても早いのだ。
ミエちゃんちはいいよなー。
お母さんは美人だし、お父さんは格好いいし、はっきり言って馬鹿にされる要素がひとつもない。
僕もあんな家の子供に生まれたかった、と思いながら、僕の鍵っ子生活が始まることになった。

合鍵は、近所のスーパーに入っているショップで作って貰った。
人のいいおじさんが、「おぼっちゃんの鍵を作るんですか?」と聞いてきた。
母が「そうなんです」と答えると、おじさんは何を思ったのか、有料のカラフルな鍵の中から好きな色のものを選ばせてくれた。
「良いのかな」と思ってためらっていると、おじさんは
「いいよいいよ、すきなの取って」と言う、
迷ったけれど、僕はブルーの合鍵を選んだ。
海の色みたいな、真っ青な色の鍵。
おじさんはにっこり笑って頷くと、15分ほどで合鍵を完成させた。

「はい、今日からこれが君の鍵だよ、大切に使ってね」
そう言って手渡された鍵はほんのりあたたかくて、僕は思わず力を入れて握った。
帰り道、母と一緒に歩いていると、母が言った。
「それ、大事だから無くすんじゃないよ」
「解ってる」
そんなの、言われなくたって解ってる。
明日から、これがなきゃ家に入ることができないのだから。
そこからは、母と黙って歩いた。
 
鍵くらい、自分で開けることができると言っている。
だけど母は、何度も僕に「鍵の開け方を練習しろ」と言った。
口うるさい母だが、きっと心配していたのだろう。
とにかく、この日から僕の鍵っ子生活はじまった。
タコ糸をつけて、首からネックレスの様に下げられたそれは、僕のお守りになったのだ。

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