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はじめまして!
当「合鍵物語」は、合鍵にまつわるたくさんの特別な思い出を集めたサイトです。
両親共働きで鍵っ子だった思い出、彼から初めてもらった鍵、などなど!とっておきのエピソードがいっぱい。
合鍵は複製できても、思い出は複製できないのです。ぜひ一話ずつ大切に読んでいってくださいね。

二つ目のブルー

もういい大人になった僕だが、今でもデパートやショッピングモールで合鍵屋さんを見ると立ち寄りたくなる。
社会人になってから一人暮らしをはじめた僕は、田舎から出てきて一人暮らしをする様になった。
僕が借りたのは、小さい賃貸アパート。
家賃を節約する為に、古くて小さいアパートを選んだ。
「古くてちょっと汚いけど、内装はどういじってもOK!」なこのアパートに引越しした時、僕は合鍵を作った。
管理人からもらえる鍵はひとつだけだったので、もうひとつ合鍵を作る必要があったのだ。

近所のジャスコには、ちゃんと合鍵を作れるお店があった。
そして、やっぱり合鍵を作ってくれるのはおじさんだ。
あの頃みたいに「好きな鍵を選びな」と言ってはくれない。
だけど、僕は鍵を選ぶ時に青い鍵を選んだ。
当時と同じ、深い海の中に潜ったみたいな青。

「これでお願いします」

「はいよ」

ニヤリと笑ったおじさんは、手早く合鍵を作ってくれた。

大人になってからの合鍵なんて、凄くもなんともない。
だけど、僕はふと懐かしい気持ちになって、合鍵に紐をつけて首にかけられる様にしてみた。

「あの時も紐をつけたけど、結局紐は使わなかったんだよな」

ちょっと笑って、独り言。
そう、せっかく鍵に紐をつけたのは良いけれど、その紐は本来の役割を果たすことなく三年目で切れてしまったのだ。

あの頃使った合鍵は、もう実家にない。
母親は僕が中学生になった頃、体を悪くして仕事をやめた。
それで、合鍵は必要なくなり、いつの間にか僕の部屋の空間から消えていたのだ。
もしかしたら、母が大切に保管しているのかもしれない。
だけど、僕はずいぶん長くあの合鍵を見ていない。

こうしてブルーの合鍵を持っていると、あの頃の鍵が手に戻ってきたみたいだ。

合鍵を持っていると、色々なことを思い出す。
「鍵っ子」といわれていやだった事、やたら「可哀想」と言われて腹が立ったこと、そして合鍵の役割が終わってしまった日のこと・・・。

ほろ苦い様な、寂しいような、不思議な感覚だったあの頃の気持ち。

彼女ができたら、一緒に合鍵を作りに行こうと思ってる。
彼女と一緒に合鍵を選んで、好きな色で作って貰おう。
その鍵にも、きっと色々な思い出が詰まっていくのだろう。
もしかしたら、将来子供に鍵を持たせることになるかもしれない。
オンラインショップでは可愛い鍵も売っているから、そういうところで買ってもいいな。

不思議だ。
あの頃、鍵を持っていた頃ってそんなに良いことばかりじゃなかったのに、こうして思い返してみると、あの合鍵をもらえたことが「特別」で、とても凄いことの様な気がしてくる。
乱暴に扱っていたあの合鍵は、僕の分身であり、僕の宝だったのかもしれない。

思い出したら、昔のあの合鍵がすごく懐かしくなった。
部屋にはないけれど、母さんはもっていてくれないだろうか。
久々に、親に電話してみようかな?
僕は近くに放り投げてあった携帯を拾い上げて、実家の番号を押した。

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